2019年 5月 3日 更新

観桜懇親会 (2019年)



                      森 祐子


 案じていた雨の気配もなくしっとりとした花曇りの中、ボストン会旗を掲げてプロも顔負けの名ガイドの小野田さんに伴われ、飛鳥山のお花見はスタートしました。吉宗ゆかりの飛鳥山や音無親水公園などの桜の名所で、江戸の昔の庶民の娯楽や生活に想いを馳せながら、お花見を満喫しました。また飛鳥山には、渋沢栄一資料館・北区飛鳥山博物館・紙の博物館などの文化施設があり、桜を愛でるだけでなく文化を愛でる楽しみも用意されていました。16階にある懇親会場からは、辿った場所がパノラマのように眼下に広がり、美味しい和食や楽しい会話と相まって、お花見のよいまとめができました。今回、会員のご友人達が参加されたことは、ボストン会に新鮮な息吹と活力を与えてくれたように思います。

 解散後、幹事さん提供の付近の名所情報を参考に、篠崎夫人、森川さんご夫妻と私は、渋沢栄一の晩香廬、青淵文庫、そして渋沢栄一資料館を見学しました。晩香廬は本会会員藤盛さんがその移築プロジェクトに精魂を傾けられた建物とのこと、設えの随所にこだわりがみられる名建築でした。渋沢栄一は政治や実業界にとどまらず、社会福祉や女子教育にも尽力し、日本女子大学では93才で亡くなる直前までの7カ月間、校長を勤めた由、そのエネルギーと関心の広さ、志の高さに感銘を受けました。このような人材が今の世に輩出することを願わずにはおれませんでした。

日没が近づいたころ、篠崎夫人と私はタクシーで駒込の六義園に向かい、10分ほど並んで入園できました。ライトアップされた大木のしだれ桜は滝が流れ落ちるように咲きほこり、華やかで圧巻の情景でした。庭園の奥にある背の高い桜は、ライトアップの色が変わり、しだれ桜とは異なる幽玄な佇まいで、能の世界に引き込まれるようでした。どちらの桜にも「桜の精」が宿っているようで、10日ほど前にボストン会主催で観劇した歌舞伎の「桜の精」の舞の場面を彷彿とさせました。いにしえより日本人の魂の奥深くに刻まれているであろう「桜の精」に出会った感を深くしました。

お花見の会と解散後の渋沢栄一関連施設の見学、六義園の夜桜ライトアップ見物、ことに「桜の精」を感じることができた今年のお花見は、忘れえぬ心に残るものとなりました。これも、幹事の方々の入念な準備、行き届いた当日の案内と有用な情報の提供、そして心通わせられるボストン会会員とご友人の参加があってこそと、心より感謝しております。

日本ボストン会
日本ボストン会 The Boston Association of Japan